Catallaxy Blog

板金加工業界の課題

2018/11/06
こんにちは、大石です。

弊社は板金加工業者を紹介する「[Mitsuri](https://mitsu-ri.net)」というメディアを運営しています。

これまで全国の板金加工業者を50社ほど訪問して、直接お話を伺ってきました。
その中で見えてきた3つの大きな課題について書いてみたいと思います。

ちなみに、私たちはソフトウェア開発の受託事業を2015年創業時から営んできました。
同じ加工業として重なる部分が多いので、ソフトウェア開発業との対比の視点でも書いてみたいと思います。

産業の空洞化と商流の歪み


板金はカバーやブラケットなど中間材(部品)がほとんどです。
そのため、一定以上のプロジェクトになると、板金加工業者とエンドユーザーと直接のやりとりはほとんどなく、セットメーカー、設計士、加工業者など、1つの新規案件に対してたくさんの関係者がいます。
エンドユーザーの最終製品を完成に導くため、セットメーカーが各関係者をとりまとめる役割を担っているケースが多いです。

かつて日本が世界の工場だったころは、エンドユーザーもセットメーカーも板金加工についての深い知識を持ち合わせていました。
しかし、労働人口の減少、海外移転、新興国の技術革新などでシェアを奪われていき、多くの板金加工業関係者が廃業することとなりました。
(私が業者を訪問してヒアリングした中で、「とくにリーマン・ショックを境に引退と廃業する人が大幅に増えた」という声をよく聞きました。)
その結果、板金加工の知見がある人が大きく減り、日本の板金加工の設計力の低下、技術力の低下に繋がりました。

また、バブル崩壊以降、景気後退のあおりを受けて、日本のメーカーにファブレス企業が増えました。
ファブレスにすることでマーケティングやセールス活動に経営資源をフォーカスできたり、工場を所有するリスクはなくなりました。
しかし、社内の技術力の低下は避けられません。
その結果、日本国内で板金加工について知っている人が急激に減っていきました。

実際に私が訪問した古くからある業者の人たちは「昔に比べてありえない図面が渡されるようになった」と口を揃えて言っています。
エンドユーザー・メーカー側の板金加工の知見がなくなっているように見受けられます。

また、セットメーカーの目的はエンドユーザーに喜んでもらうことなので、加工業者に対してQCDの面でシビアにならざるをえません(とくにコスト)。
その結果、加工業者はジリ貧になり、労働環境の悪化や人材・後継者不足が深刻化し、廃業に追い込まれることが多くなりました。

Mitsuriは、板金加工業者に既存の「お付き合い」がなくなっても、技術さえあれば評価されて売上があがる仕組みを提供することを目指しています。


ウォーターフォール・モデル


板金加工のプロセスは、ウォーターフォール・モデルで行われるケースが多いです。
ウォーターフォール・モデルとは、前工程が終わるまで次には進まず、かつ前の工程には戻らないという開発手法です。

ウォーターフォール・モデルでは、一般的に「上流」と「下流」に分けられます。
上流では、エンドユーザーの要望のヒアリング、すり合わせ・提案、見積り、設計、材料調達など加工作業に入る前の段階で必要になる情報を定義します。
下流では、上流の情報をもとに加工作業を行います。

ウォーターフォール・モデルがうまく機能する場合とは、前工程への手戻りが発生しない場合です。
つまり、エンドユーザーの要望や製品設計が100%完璧な状態であればウォーターフォール・モデルでの生産はうってつけです。

もちろん、そのようなケースはめったになく、実際にモノができてみて品質や公差などの調整が入ります。
下流工程を担う板金加工業者からすると、メーカーが行う上流工程の状況に経営資源が左右されるので、メーカーと板金加工業者との間で利害関係の対立が生まれてしまいます。


参入障壁の高さ


ソフトウェア開発業との一番の違いがこの参入障壁であり、かつ一番大きな問題です。

ソフトウェア開発業は初期投資が必要ないので、売上がほぼそのまま利益になります。
一方、板金加工業は揃えるモノにすごくお金がかかります。
土地・建物はもちろん、加工するための工作機械も、一般的には2000万円〜数億円ほどの投資額が必要です。
それだけではなく、仕入れや人件費など諸々のランニングコストもばかになりません。

ソフトウェア開発業が1日で投資額を回収できるのに対し、板金加工業は数年や数十年かけて投資額を回収するという業界なのです。
(そのため、行政などでものづくり補助金などの制度でハードルを下げている試みをしています。)

板金加工業で他社と張り合える競争力を1から持とうとすると、敷地と工作機械を持っていることが前提になります。
なので、最低でも何千万円もの元手がないとスタートアップとして営むことができないのです。

ソフトウェア産業がこの30年でなぜここまで急速に発展してきたかといえば、こういった参入障壁が限りなく低かったことが一番に挙げられます。
一文無しの若者でも、意欲さえあればその日の内にソフトウェア開発業を始められる業界なのです。

これらの課題を解決するにはどうすればいいのか?


これらの課題が解決されない限り、板金加工業に明るい未来はないと言えます。
では、これらの課題を解決するにはどうすればいいのか?

次回はその解決策について述べてみたいと思います。